死の瀬戸際で

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大都会の喧騒が遠ざかっていくような感覚。 瞼を瞑って、視界に映る歪みを遮断してから、しばらく経った。 同時に仁達の慌ただしさが、段々と離れていった気がする。それがそんな感覚にさせたのだろう。 落ち着いた頃、重たい瞼を持ち上げて俺は辺りを確認した。 すぐ目に映ったのは赤レンガ一色。 どこかの部屋かな? 見渡すと、狭い部屋だという事がわかる。壁や床、天井に至るまで、全て赤レンガで構成されていた。 窓もなければ、ドアもない。完全に密閉された空間。密室とは、まさにこの事じゃないだろうか? そんな事を考えながら横を向くと、はるかと目が合った。
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