死の瀬戸際で

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道は細く薄暗い。奥には扉らしきものが確認できる。 BARに行く途中の階段を思い出すな。あの時も先に何があるのか、不安だった。 そして隠された危機は、優君が救ってくれていた。 俺もあれだけ強ければ、自信で満ち溢れるに違いない。 次に思い出すのは、消えゆく中で見た優君の優しげな表情。 そして、仁と美沙との日常。 必ず帰る。改めて認識して、恐怖を掻き消す。 『戦いの前は必ず自分にとって大事な人を思い出せ。 そして切に願え。 そうすれば帰る想いが君を強くする。 昔から戦争に出た強き人間はそうしてきた。   だから強い』 「はるか 開けるぞ」 扉の前に辿り着き俺はノブを握り締め、首だけ後ろに向けてはるかに確認をとった。 はるかは真剣な表情で頷く。 ガチャッ 開けると小さな音を立て……。 俺は扉を前に押した。
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