古手川仁

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「あんたも気をつけなさいね」 そう。このしわくちゃな婆さん。 俺のお婆ちゃんだ。 上品な着物が懐かしくて……。腰が曲がっているのをいつも俺は馬鹿にしていたっけ。 中学生の頃、病気で他界して。 大好きだった。婆ちゃんだ。世界で一番大切だった人だ。 懐かしくて、今のこの状況を忘れそうになる。 ━━━━━━━━━━━━━━ クエストボス接近中! ━━━━━━━━━━━━━━ 身に迫った危険を呼びかけてくれたのは、一番大切な人だった。 ブラックアウトは脳を読み取ってプレイしている。だからこそ、一番大切な人がわかったのかな? プレイする人が違うと、呼び掛けてくる人が変わるパターンだな。 婆ちゃんはまるで俺を知らないみたいだ。他人みたいな。 でもそれでもいい。 突然の事でもさ。動揺してないのはさ。婆ちゃんだからだよ。 婆ちゃんに会えたから、動揺していないんだ。 「気をつけなさいね」 婆ちゃんは背を向けて、どこかへ歩き出す。 懐かしさと暖かい心で満たされた時。 街は血に染まった。
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