古手川仁

俺は鉄の扉の前で佇んだ。

もっと冷静になれ。落ち着いて考えれば、中から人が出てこないパターンもありうる。

それはクリア出来なかった時だ。つまりプレイ中の死亡……。

その場合は部屋の中は空になり、空室になるはず。

確定的なのは、現時点では使用中のためクエストは出来ない。

様々な考えを頭の中で巡らせて、俺は結論に至った。

待とう……。もしかして、誰も出てこないかもしれない。

さらに出てきたとしても、陰から観察してれば良い。

簡単な事だ。もしかして、好戦的なプレイヤーじゃないかもしれない。

その場合は話しかけてもいいんじゃないか？

軽率だな。考えが変な方向へ走っている。

俺は辺りを見回して、どこか隠れられそうなポイントを探した。

あそこが良い……。視線の先は真向かいの喫茶店。店がガラス貼りになっているから、ここが良くみえるはずだ。