古手川仁

28/36

1383人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
こんな状況の中でも婆ちゃんは俺を見て、穏和かな表情を浮かべていた。それが逆に婆ちゃんらしくて。 まるで俺を心配させないように。 幼き頃、繋いだ手が温かった婆ちゃん。 シワシワの手で力強く俺の手を握り締めてくれた。 「婆ちゃん!」 男より背が頭一つ低い婆ちゃん。腰が曲がっている分、羽交い締めにされて、きっと苦しいはずだ。 これは ゲームなんだ 頭でそれを必死に理解する。 あれは婆ちゃんじゃない。 婆ちゃんは死んだんだ。 「おら!車を持ってこい!」 男は銃口を空に向け、数発だけ音を鳴らした。 同時に湧き上がる悲鳴。 婆ちゃんのこめかみには再び銃口が当てられる。 【残り時間 13:30】 駄目だ。時間は刻々と減っていってる。 鎌を使いに、ここへ来たんだろ? 自信はあった。こんな状況じゃなければ……。 【残り時間 13:00】
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1383人が本棚に入れています
本棚に追加