古手川仁

閑静な住宅街を抜けて、和也の部屋を目指す。

現在所持しているのは、ＤＩＭと家から持ち出した包丁のみ。

和也の家に行くまでが、一番危険だ。いつ、どこで誰に襲われるかわからない。

家からゲームを始めたのは、悩んだ末の結論。

ノートパソコンだから持ち出しは可能だが、外でやるわけにはいかない。かと言って、和也の家に行ってプレイするわけにもいかない。

今回は誰にもバレたくないからな。

だったら和也の家の近くまで行って、そこでログインする手段が一番安全かと思われるが、実は違う。

それだと、現実世界では外で寝ちゃう事になるからな。逆にそっちの方が精神的に不安だ。

一度ログイン地点を作ると、ログアウト時に武器はそこに残る事になるから、なかなか変更する事ができない。

うまく考えたもんだ。

今回の目的をクリアすれば、しばらくはもう一人ではやらない……。

俺は全身に汗を掻きながら、和也のアパートの前に辿り着いた。