1361人が本棚に入れています
本棚に追加
前を登る与作の背中は何かを物語っていた。
やはり背中にも、土が沢山ついている。
「貧乏な村でさ。父さんと母さんと三人で暮らしてて……。作物を育てているんだ。小さい頃からずっと……」
与作は一旦立ち止まって、息を吸ってから歩き始める。
「雨の日も。風の日も小さい頃から、ずっと農業をやっていた。
武士に憧れる夢はなかったし。
富豪になりたいと思った事はない。
そうだ……」
背中しか見せない与作だが、その姿はどこか寂しさを感じさせる。
話す事で自分自身を確かめているような……。
すると、空からは冷たい水滴が降り始める。
雨だ。
「あいつと出会ったのも、こんな雨の日だった」
最初のコメントを投稿しよう!