かぐや姫

31/37
前へ
/39ページ
次へ
前を登る与作の背中は何かを物語っていた。 やはり背中にも、土が沢山ついている。 「貧乏な村でさ。父さんと母さんと三人で暮らしてて……。作物を育てているんだ。小さい頃からずっと……」 与作は一旦立ち止まって、息を吸ってから歩き始める。 「雨の日も。風の日も小さい頃から、ずっと農業をやっていた。 武士に憧れる夢はなかったし。 富豪になりたいと思った事はない。 そうだ……」 背中しか見せない与作だが、その姿はどこか寂しさを感じさせる。 話す事で自分自身を確かめているような……。 すると、空からは冷たい水滴が降り始める。 雨だ。 「あいつと出会ったのも、こんな雨の日だった」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1361人が本棚に入れています
本棚に追加