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「あれが頂上?」
雨によって閉ざされている視界は、山頂だけは見通せる。
半ばありえない現象。
目の前は雨で埋め尽くされているのに、山頂だけは、はっきりと見通せた。
ただ、あれって……。ありえないだろ。
思わず、その光景を見て目を見開く。
山頂は、すぐそこなのに絶望が襲いかかってくるように感じた。
長きに続いた土の終わり。
急斜面が滑らかになっていることが、終点を示していた。
その終わりは、意外な新しい絶望を作り出している。
高くそびえ立つ岩肌。
平らになった地面からは、巨大な岩が伸びている。
頂上が見えない……。
90度の絶壁。
驚きの後に、気付いたこと。
多くの人間が岩に群がっていた。
岩によじ登っているのも、チラホラいる。
「ありえないだろ?岩の上に木が立っているんだ」
与作は巨大な高き岩を見据えながら言った。
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