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僅かだが真っ暗闇に差し込む日の光は、間違いなく出口だった。
少し離れていただけなのに、懐かしく感じてしまう。
全身が光を求めていた。
徐々に壁と足下が明るくなっていき、それにつれて歩く速度が自然と上がる。
雨の音さえ、嬉しく感じた。
やがて急な坂を登り終わり、とうとう岩の中の道が終わる。
最後の一歩は、平坦な地面の上に足裏を置く形になった。
空から降り注ぐ無数の水滴が、体を濡らし始める。
空は雨雲が広がっていた。
決して、辺りは明るいわけじゃない。
だけど、雨が降り注ぐ中、それを跳ね退けているかのような錯覚に陥る物を目にした。
「ここが頂上だ」
それを眺める与作の顔は、どこか誇らしげに感じる。
広くはないが、岩のテッペン。
中央には、蓬莱の玉が実る大木が立っていた。
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