蓬莱の玉の枝

16/36

1201人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
僅かだが真っ暗闇に差し込む日の光は、間違いなく出口だった。 少し離れていただけなのに、懐かしく感じてしまう。 全身が光を求めていた。 徐々に壁と足下が明るくなっていき、それにつれて歩く速度が自然と上がる。 雨の音さえ、嬉しく感じた。 やがて急な坂を登り終わり、とうとう岩の中の道が終わる。 最後の一歩は、平坦な地面の上に足裏を置く形になった。 空から降り注ぐ無数の水滴が、体を濡らし始める。 空は雨雲が広がっていた。 決して、辺りは明るいわけじゃない。 だけど、雨が降り注ぐ中、それを跳ね退けているかのような錯覚に陥る物を目にした。 「ここが頂上だ」 それを眺める与作の顔は、どこか誇らしげに感じる。 広くはないが、岩のテッペン。 中央には、蓬莱の玉が実る大木が立っていた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1201人が本棚に入れています
本棚に追加