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美しく輝く、蓬莱の玉の木。
根が銀、枝は金、そして実は真珠の輝き。
木は山頂全体を照らすほど光り輝き、生まれてから暗闇を知らないような明るさ。
こんな美しい木は見た事がない。
これがかぐや姫の作った、蓬莱の玉の木。
枝を持ち帰るなんて……あまりに勿体無い気がする。
与作が、周りを見渡しながら口を開いた。
「まだ、誰も来ていないな」
表情は心なしか安心した顔つきになっていた。
覚悟はしていても、結婚相手を見届けるなんて、相当きついはず。
岩の遥か下からは、男達の悲鳴と呻き声が聞こえてきた。
嫌でも耳につく。
与作は蓬莱の玉の木に近づき、そっと枝に触れた。
銀と金と真珠の幻想的な大木の前で、思い出を大事にするような与作。
瞳は木を眺めているのに、どこか遠くを見ている気がした。
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