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弓矢を入れた籠は腰に携えている。
その中から一本を取り出し、男は弓を構えた。
男の瞳に俺達は眼中にない。
狙いは、蓬莱の玉の木の方角へ真っ直ぐ向けられている。与作だ。
殺意を剥き出しにしながら、男は低く野太い声で口を開いた。
「俺はお前を知っているぞ。いいやかぐや姫の事なら、何でも調べたさ。
下の山頂でお前を見つけた時は確信したよ。こいつは知ってるって」
美沙の言う通りだった。
本当に後ろにいたんだ。息を潜め、俺達の様子を窺いながら、こいつは後をつけてきたんだ。
「全員、動くなよ。動けば与作は殺す」
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