蓬莱の玉の枝

20/36

1201人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
弓矢を入れた籠は腰に携えている。 その中から一本を取り出し、男は弓を構えた。 男の瞳に俺達は眼中にない。 狙いは、蓬莱の玉の木の方角へ真っ直ぐ向けられている。与作だ。 殺意を剥き出しにしながら、男は低く野太い声で口を開いた。 「俺はお前を知っているぞ。いいやかぐや姫の事なら、何でも調べたさ。 下の山頂でお前を見つけた時は確信したよ。こいつは知ってるって」 美沙の言う通りだった。 本当に後ろにいたんだ。息を潜め、俺達の様子を窺いながら、こいつは後をつけてきたんだ。 「全員、動くなよ。動けば与作は殺す」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1201人が本棚に入れています
本棚に追加