蓬莱の玉の枝

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「あんた見てるとさー!切なくなるよ!何のためにこんなに濡れながら、山登ってるの!?」 与作は美沙の言葉を聞かないフリをしているのか、そのまま足を進めた。 まるで美沙は俺の心の中を言葉にしてくれているような気がする。 土が濡れて、ぐちゃぐちゃになっている分、足腰に余計 力が入った。 頬を冷たくさせる雨は、山頂に近づくにつれて、さらに激しさを増していくような。 グダグダな体。水で服は重たくなり、地から離す度に靴は体を引っ張るようにズッシリくる。 「私、思った……んだよね。あ……んたと会ってさ」 美沙の声が無数に降り注ぐ雨のせいか、どんどんかすれていく。 「かぐや姫は絶対あんたの事、待ってるよ!」 「あんたが良いんだよ!」 すると、これまで進み続けていた与作の体がピタッと止まった。 「身分の違いを考えろ!」 一喝するような与作の怒声が響き渡る。 直後、音を立てて、美沙の体は地面に崩れ落ちた。
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