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誰だ……? 妙な不安を覚えながら、俺は玄関へ移動した。
静かな空気が漂う。もしかして、美沙が忘れ物をしたのかもしれない。
実際にそれは時々ある。
しかし、いつもと違うのはインターホンが一度しか鳴っていない。
あいつはいつも忘れ物をした時は嫌がらせの如く、インターホンを連打する。
美沙じゃない。
俺はノブを掴み、ゆっくりと扉を開けた。
「ご、ごめんなさい。もう寝てたかな」
優しい声が耳に届いてくる。その瞬間、誰かすぐにわかった。
何となく意外性を突かれたような気がして、一瞬だけ呆然としてしまう。
扉の向こうには、はるかが立っていた。
今まで、帰ってから戻ってきたことなんて一度もなかったから選択肢になかった。
「どうした?」
何となく、いつもと様子が違う気がする。
「あのね。迷惑じゃなかったら」
ショートパンツからはみ出した長い足は、月光に照らされると、より美しく見えた。
「明日、動物園行かない?」
「動物園?」
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