1124人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
地元の駅での別れ際。改札口で、はるかは俺の家とは逆方面の出口をニコッと笑って指差した。
「私、こっちだから」
「ああ。じゃあまた明日な」
「明日は頑張ろうね」
歩き出すはるかの背中を目で追っていく。
はるかは一度だけこっちを向き、笑顔で小さく手を振ってから、また歩き出す。
俺はそれに対して、自然と笑いながら手を振り返した。
やがて遠くに離れ、はるかの背中が駅で溢れかえる人混みで見えなくなる。
「さて、帰るか」
後ろを振り返り、自分の家の出口の方を向く。
ドンッ!
「いてっ!」
何かに勢いよくぶつかり、俺は地面に尻餅をついた。
「おい!コラ。気を付けろよ!テメー!」
見上げると、白いスーツを着た風貌の悪い男が、俺を見下ろしていた。首もとに光る金のネックレスと肩まで伸びた派手な金色の髪。不機嫌そうな表情で俺を睨み付けている。
「すみません」
男は白い革靴で、俺を軽く蹴飛ばす。
「ざけんな!」
俺は反射的に思わず両手を使って体を防いだ。
男は舌打ちをして、そのまま歩いていく。
嫌な奴だ。
せっかく今日は楽しかったのに……。
それからは何事もなく、俺は家に帰れた。時間は夜十時。明日はとうとうクエストの日だ。
早く寝て、明日に備えよう。
段々と明日のことを考え始め、緊張してくる。
それでも布団に入ると、意外にすぐに寝付けた。
寝るまでの頭の中では、はるかの笑顔が心を癒してくれていた。
最初のコメントを投稿しよう!