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滲む視界の中に見えるもの。
ユキヤは私の胸ぐらを掴み、拳を握り締めた。
すぐに何かが視界を閉ざす。
──ゴツっ!
「ハハハハ!」
──ゴツッ!
──ゴツッ!
顔全体に走る衝撃。首が吹き飛んだのかと……勘違いしてしまうほどの力で私は殴られている。
能力の発動はもう出来ない。
鉄球も能力解除で消え失せてしまった。
暗闇が私の視界を侵食する。
ただ私の耳には聞こえてきた。
「はるかー!はるかー!」
闇が広がる中、音だけは私に希望を与えてくれる。
だから、寂しくなかった。
何度も殴られた後、体が宙に浮き、背後から衝撃が走る。
おそらく投げ捨てられたんだ。
私は後ろに寄りかかり、全ての力を抜いた。
生温い液体が全身から流れ出ているような気がする。
「はあ はあ 死んだか……じゃあな。はるか」
ユキヤの声が聞こえると、次に辺りから気配が消える。
あまりにも、呆気ない最後かもしれない……。
でも後悔はないよ。
気持ちに嘘はつきたくなかったから。
「はるかー!はるかー!」
どうして、こんなに明るいんだろう。
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