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珍しいな。お前がやめておいた方が賢明なんて……。
ヒカルは身動きせずに、ジッと俺を見つめてくる。
分厚いローブの奥に潜む瞳。
「はははっ。俺を斬るって?」
薄い唇がうっすらと現れ、白い歯が見え隠れした。
攻撃を仕掛けてくる様子はない。それどころか、防御する気配もない。
今にも一太刀振れば、真っ二つに斬れそうだ。
「お前みたいなのは嫌いじゃない」
ヒカルは少し動き、俺と真っ直ぐ向き合った。
お前みたいなのは嫌いじゃないって……。バカか! 何様だ。
そうだ。理由はこうしよう。
戦争に参加するように、説得を試みたが失敗。
そこで強引に連れていこうとしたが、怪我を負わせてしまった。
それなら、何ら問題ないはずだ。
ヒカルは変わらず、俺の目の前に隙だらけで立っている。
お前みたいな奴は沢山見てきたぜ。威勢だけの中身なしが多かったがな!
俺は柄を握り締め、一瞬で引き抜き、ヒカルの体に向けて閃光の如く、刀を振った!
「!」
「どこを斬ってるんだ……?」
たちまち全身に悪寒を感じる。
首にまとわりつく綺麗な白い腕。
ヒカルは真後ろから俺の首に腕をかけてきた。
「お子ちゃまの刀じゃ、俺の姿を捉えることは出来ないぜ」
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