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「すみません……起きてます」
部屋の扉を開けて、私は隊士に告げた。
なるべく寝起きと見せないための細かい演技を忘れない。
「局長室で、局長及び副長がお待ちです!」
「わかりました。すぐに行きます」
私がそう言うと、隊士は慌ただしく走っていった。
きっと忙しいのにも関わらず、副長に命を受けてきたのですね。わかります。
「さて行きますか……」
私は瞼を瞑って、心臓がある辺りに掌を当てた。
急がないと、またうるさいですからね。
いや、寝坊して全体の集まりに行かなかっただけで、相当な嫌みを言われることは覚悟しています。
能力発動。【瞬間移動】
体の周りを暖かい風が吹き抜け、僅かに空気が振動する。
それが修まると私はすぐに瞼を持ち上げた。
「これで貸し68だな」
聞こえてくるその声には、これ以上ないほどの嫌みが込められています。
やっぱり……。
「すみません。戦いに備えて命力を蓄えていました」
我ながら素晴らしい理由だ。
「いつになったら貸しは返せるんだろうなあ。天草」
土方副長は冷たい空気を醸し出しながら、意味深な笑顔を浮かべています。
「はははははは!歳。それくらいにしとけ」
赤い羽織を纏った局長は勇ましく大声で笑いました。
その羽織、欲しい。
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