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視界の先に潜む、濃霧に隠された鏡の搭。確かここからあの場所まで2km離れているんだよな?
もっと近い気がする。それほど、鏡の塔は大きく見えた。
周りでは他の隊士が双眼鏡を使って覗いたりしているが、鏡の塔が見える以外は、これと言って特に変わりはないようである。
メビウス側も外に出ないで、建物の中で様子を見てるってことか。
戦争が始まるまでは、中央に境界線が張られているらしく、向こうに侵入することは不可能だとテレビで言っていた。
「早く戻っておいでよー」
背中の向こうから聞こえてくる美沙の言葉に頷き、俺は10階の休憩室を後にした。
エレベーターに乗り、98階を目指す。
着いた先は、これまで何度も足を運んだ土方さんのフロアーだ。
冷えた空気は、何度来ても体に慣れることはない。
凍えた空気に堪えながら、俺は土方さんの部屋に入室した。
「ふー。んで何の用事何だ?」
氷の玉座にふてぶてしく座る土方さんが溜め息をつくと、口の中から冷たい息が溢れた。
「俺の部屋が待ち合わせ場所とは言え、副長を直々に呼び出すのは、なかなかできないことだぞ」
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