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「それから古手川仁」
「はい」
土方さんは名前を呼んだ後、俺と仁を交互に見ながら口を開いた。
「お前らは男だ。戦場に出てもらう。渋谷は総司の隊へ。古手川はセスの隊へつけ」
優君の隊にか……。最大限の配慮を感じると同時に、予想通りそれぞれが別れることに戸惑いを覚える。
「「はい」」
俺と仁は、静かに土方さんへ返事をした。
「女は卑弥呼の隊だ」
「名前は女じゃありません。進藤美沙です」
美沙の言い方に、凍てつく部屋の空気が一瞬にして、さらに凍ったように緊張感が漂った。
そんなところで、刃向かわなくていいんだって!
怒られるのかと思いきや、すぐに土方さんは意外な返答をした。
「そうか。悪かったな。全力でサポートしてくれ」
もしかしたら、性格や口調から怖くて狂暴な人と勝手に想像しているだけで、本来は優しい人なのかもしれない。
何となく、そう思える言い方だった。
「着てみなよ」
ニッコリと優しく微笑む優君が、俺達に向かって言った。
真新しい羽織に三人で袖を通していく。
浅葱色の羽織は妙に責任感を背負ったように重みがあった。
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