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「うん!似合ってるよ。みんな」
優君は羽織を着た俺達に、さらに優しい笑顔を向けてくれた。
背負った誠の字。たかが羽織を着たぐらいで、何が変わるのだろうと思うかもしれない。
実際に着るまで、俺はそう思ってた。
しかしいざ着てみると、新撰組の隊士になったのだと自覚し、責任感みたいなのが勝手に心の中で生まれる。
それとは別の想いも強くなる。
メビウスの輪のリーダー。神。そいつに会って、はるかを生き返らせてもらうんだ。
「よし。もう行っていいぞ」
それから俺達は、土方さんの部屋を後にし、エレベーターで一階を目指した。
途中、何度も停止し、次々に色々な人が乗り込んできて、エレベーターの中は混雑する。
自室待機の放送はもう止まっていた。
集会は屯所の外で行われるから、全員が一階を目指しているんだ。
外に出ると、既に百人以上集まっていた。
夕暮れ時。丸の内のオフィス街に建つ高層ビルが沈みかけた夕陽の光を遮断し、薄暗さを演出している。
集まっている新撰組の隊士は、口々にみんなこう言っていた。
「いよいよ。戦争だな」
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