柳生十兵衛

12/17
1045人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
一度目は素振り。 次の瞬間、強く地を蹴る。 呼吸を整えてから走り出すほど、我輩には余裕があった。 一瞬でそこまで落ち着く自分にも驚きなのだが。 孫権との間合いを一気に詰め、刀を振り上げて構える。 我輩は孫権に向けて、斬りかかった! 「──!」 速い。思わず心の中で呟いてしまうほど。 それほど孫権は素早く、我輩の太刀筋から逃れてみせた。 瞬間移動の如く、視界から消える。 空を切り裂いた次に、刀は地面と激突した。 同時に、冷たいアスファルトが地面を破裂させ、溝を作り上げる。 「背後か」 死線を潜るかのような間。 見失った孫権は、背後から少し離れた場所に気配を捉える。 「噂に聞く通り、素晴らしい刀ですね。刀に籠めた命力によって、自由に威力を変えられたり、変則的な太刀筋を生み出す妖刀」 そこまでわかってれば、十分すぎるほどに、我輩を知っているじゃないか。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!