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一度目は素振り。
次の瞬間、強く地を蹴る。
呼吸を整えてから走り出すほど、我輩には余裕があった。
一瞬でそこまで落ち着く自分にも驚きなのだが。
孫権との間合いを一気に詰め、刀を振り上げて構える。
我輩は孫権に向けて、斬りかかった!
「──!」
速い。思わず心の中で呟いてしまうほど。
それほど孫権は素早く、我輩の太刀筋から逃れてみせた。
瞬間移動の如く、視界から消える。
空を切り裂いた次に、刀は地面と激突した。
同時に、冷たいアスファルトが地面を破裂させ、溝を作り上げる。
「背後か」
死線を潜るかのような間。
見失った孫権は、背後から少し離れた場所に気配を捉える。
「噂に聞く通り、素晴らしい刀ですね。刀に籠めた命力によって、自由に威力を変えられたり、変則的な太刀筋を生み出す妖刀」
そこまでわかってれば、十分すぎるほどに、我輩を知っているじゃないか。
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