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防御を繰り返していた扇子にも、何かしらの能力がある事は間違いないが、注目すべき点はそこじゃなかった。
奴は扇子で我輩の気を引き、別の能力を使っていた。
「あなたはもっと注意して戦うべきだった」
それは、よく目を凝らして見ると、すぐにわかった。
広い範囲ではないが、空中に霧のような命力が散布されている。
やられた。狭い能力を活かしてこその建物内。
息をした時に吸ってしまったのだ。
致死量に値する猛毒を。
おそらく、孫権が恐れていたのは、我輩の遠距離攻撃。
「気づいたようですね。自分の愚かさに」
全身の力が抜け、吐き気が込み上げる。
握りしめた刀の柄が滑り落ちた。
同時に地に膝をつき、何が起きたのかもわからぬまま、気づけば頬には冷たいコンクリートが当たっていた。
意識が遠退いていく中、空からは孫権の声が聞こえてくる。
何も無くなってしまうことへの虚無感。
これが死に対する恐怖。
「解毒剤はあります。しばらくは動けませんがね。あなたが新撰組について色々話してくれるなら、施しましょう」
悪魔の囁きに、力もない中、顔の筋肉だけが動き、我輩は笑みが溢れた。
答えは決まっている。
「我輩は」
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