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充満する煙を切り裂くように、ミラは敵に向かって突撃した。
切り裂かれた煙は、すぐに元に戻るが、ミラが動いたことだけは間違いない。
「敵がいない!」
しかし、間を開けることなく、すぐに予想外の事態が起きる。
普段は冷静なはずのミラが、珍しく慌ただしい声を上げた。
敵が消えた?
緊迫した空気が、さらに追い込むように緊張感が増す。
バカな。気配はまだ中央に……。
その途端、煙は吸い込まれるように、俺が居る場所を通過していく。
煙は背後へ、凄まじいスピードで消えていった。
後ろ……?
煙が消え、視界が晴れ渡り、振り向いた瞬間。
自軍が置かれた、この上ない窮地を悟ることになる。
奴は、屯所の目の前まで駆け抜けていた。
凄まじいスピードで、荒野を走る。
すぐに囲んだ中央に視線を戻すと、黒く平べったい星が、宙に軽く浮いていた。
星は動き始め、走り抜けた敵を目指して、追いかける。
窮地の真の意味。
一人の敵を囲んでいたはずの数十人で作られた円。
見渡すことにより、何が起きたのかをやっと理解した。
首に白いスカーフを巻いた何百の敵。
俺達は敵に囲まれていた。
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