戦争に反対した女

33/33
前へ
/33ページ
次へ
風神は血を流しながらも、相変わらずの余裕な表情を俺に見せつけた。 かあああ。向こうの方が、同じ腕の傷でも深手なはずなのに。 何なの。この差。何なの。その涼しそうな表情。 カッコつけたって、本当はわかってるんだから。 痛いの我慢してるんでしょ? 見え見え。これだから、強そうに見える奴って嫌いなのよ。 「さすがは組長クラスだ。やはり手を抜いて、先に進むなんてのは、甘い考えだな」 「──!」 突如、風神の体からは、不吉な力が溢れ始める。 それを感じ取ったのは、直感以外の何物でもない。 命力が爆発的に上がった? まさか。こんなにも底を隠していたのか? 数値化しても、個人差によって違うわけだから、大した参考にはならないが……。 それでも……。 「風神様が能力を使うぞぉおぉ!」 「離れろおおぉお!」 「来るぞ!能力がああ!」 この一騎討ちを見守る群衆は、危機を感じてか、逃げるように距離を取り始めた。 風神の命力は、さらに膨れ上がる。 これから何が始まるんだ。 俺も一緒に逃げたい。 屯所内が心配だ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1091人が本棚に入れています
本棚に追加