天草の誤算

迂闊でしたね。私の判断はどこで誤ったのだ。

間違いない。この男は、神ではない。

普通は、在り来たりな場所にリーダーを設置しない方が、どう考えても効果的です。

しかし、大きければ、大きい勝負ほど、奇策はなかなか取りにくいものです。

これだけのリスクが掛かった勝負なら、一番安全な場所に、リーダーを絶対に配置するはずです。

通常ならば。

それが人間の心理。

そして、この部屋は、メビウスの輪にとっては一番安全に、神を守れるはず。

現に、部屋の中のみに限りますが、神と三国志以外は能力を使用出来ませんからね。

この簡素な部屋は、隠れる場所もない。勿論、能力で身を隠している可能性は、否定できません。

しかし、ほぼ間違いなく、神はこの場にいないでしょう。

それが作戦だとしたら、何て大胆な。

とりあえず落ちつけ。まずは現状を打破しなければいけません。

先に扇子の男が動くか？

もしくは、後ろの曹操さんと謎の人物が、先に動くか。

大怪我は覚悟しないといけませんね。

「──！」

瞬時に、全神経を集中させ、体が反応する。

先に仕掛けてきたのは、曹操だった。

「待て！曹操！」

扇子の男は、後ろから迫り来る曹操に向かって、怒鳴り声をあげた。