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必死に走り続け足が痛くなっても、背負っていることで生じる腕の疲れも、歯を食いしばって堪え、全身から流れ落ちる汗を拭うことなく進行する。
戦火の間を縫うように潜り抜け、気付けば密集地帯からの脱出に成功していた。
振り返ると、火の海の外れでは、変わらず優君とセスさんが劉備と一歩も劣らずの戦闘を繰り広げている。
前方には見覚えのある建物。
そうか。裏に何があるのかと思えば、信長さん達と潜入し、集会が行われたあの建物だ。
向きが裏だったから、気付かなかったのか。
メビウスの輪、大聖堂。
あそこまで行けば、目立たずに休むことができる。
『気を抜くなよ。あそこにも敵がいるかもしれない』
わかってる。
そう言われながも、早く休憩したい気持ちが焦りを生み、足早に大聖堂へと向かって駆けていく。
それでも自分なりに慎重に近づき、何とか大聖堂目前へ辿り着いた。
入口の扉を見ると、あの惨劇が脳裏を過る。
どうする。中に入るか。
入口の前で佇み、しばらく迷ってから、意を決して、俺は扉を開けて中へ入ることにした。
「──!」
しかし、その迷いもすぐに無駄となる。
俺が仁を一旦降ろしたところで、扉が勝手に開き、中から人が出てきた。
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