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急に何を言ってるんだ?この人は。
龍の心臓?
「そう。一番にここへ訪れるはずの黒い星に乗った男へ」
柳生組長は、戦争の中心部の方角へゆっくりと足を進めていく。
「一介の敵の兵士に、こんな事を言っても伝わらぬかもしれないな。ただし、お前の心はこの戦場の地の全ての人間の中で清い。それを知っているのは私だけ」
ゆっくりと離れていくその姿。誠を背負っているはずなのに。
どことなく違和感を覚える。
その背中には、何故か見覚えがあって。
背負ってる重さとか、抱えてる痛みとかじゃなくて。
いやそれもあるけど。
背中に見覚えがあって。
何故だろう。
小さな背中から。
大きな背中へ。
あの不安を抱えた、
あれ?
「不思議なものだな。ゲームの中とはいえ、人間の心を読み取れる。別の命を作り出し永遠に繰り返されるデータ。それに終止符を打ったのがお前。弱気人間であろうと、あの出来事は事実」
『気をつけろ!こいつの命力、異常だぞ!』
柳生組長の体の周りを虹色の光が包み始める。
それでも警戒心を抱くことなく、俺は一歩だけ柳生組長の方へ足を進めた。
そうだ。この背中は。おそらく別の人間なのかもしれない。
でも何となく、その背中が懐かしくて。
きっと間違ってるかもしれない。
我慢しきれなくなった何かが喉の奥から溢れる。
「与作うぅう!」
あのかぐや姫で逢った与作じゃないのか?
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