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柳生組長は俺の言葉には何も答えず、その場で立ち止まった。
かぐや姫に恋した農民の男と重なるなんて、どうかしているかもしれない。
でもその背中を見て、息が止まるような、うまく言葉に出きないような、そんな感覚に陥った。
それは、本当にあてに当てにならない直感としか言い様がない。
山を登る想い出。激しい豪雨の中を、五人で登り、その先頭を歩く男の背中を俺は見続けていた。
初めは頼りなく迷いのある背中から、決意が固まった時には男の背中へ。
「あれは私が管理するデータだが、もう一人の本当の私である事実。もしかすると、あれが本当の姿かもしれない。その時に経験した内容は、脳内で同時に流れ込んできている。私の意思で動く、もう一人の俺。永遠に迷う男を演じ続け、永遠に結ばれない恋を願う男。しかし、永遠に繰り返される演劇に、終わりが来ることを教えてくれたのがお前達だ」
どういうことだ?やっぱり与作じゃないのか?
「今はそれだけわかっていればいい」
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