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何だ?この感覚は……心の中で響き渡るような声。
これは光刀の……。
ギィイイイイイ
高い音が大聖堂内に轟き、扉は完全に開ききった。
俺は横たわる仁の前に庇うように立ち、光刀を構えてから白煙を纏わせ戦闘に備えた。
どうやって切り抜ける?
もう背負って逃げることは難しい。
『ヒャハハハハハハハ!』
薄気味悪い声が続く。
光刀と同じで、心の中で響くような感覚だ。
『どうやらそのようだな』
「──!」
開かれた扉から、足を引きずるように誰かが入ってきた。
すらりと整った体型。扉に手をつき、俺の方を直視している。
明らかに重傷の怪我を負っているのが目についた。
顔が暗くてよく見えない。
『気をつけろ。ああ見えて、お前をしっかりと見定めている』
わかってる。
敵は扉から離れ、足を引きずりながら、こっちに向かって進んできた。
もしかして、これだけ重傷なら勝てるかもしれない。
腹から流れている夥しい血液が、どれだけ命を蝕んでいるか物語っていた。
ある一定の距離──。
ボロボロの男は忽然と足の動きを止めた。
緊張感と静寂。
乾いた空気。
男は俺を直視しながら口を開いた。
「やっぱり間違いないな。渋谷和也じゃないか」
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