局長と神

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■大聖堂内内部 ────渋谷和也──── 「和也君?」 ヒカルの死の直後、不意に呼ばれる名前。 その声を記憶していた脳。体が無意識に反応する。 この声は……。透き通る高い。聞き間違いかと耳を疑うが、確かに聞こえてきた声に間違いがあるはずがなかった。 慌ただしく駆け寄る足音。 仁の傷が深く、新撰組屯所へ帰ることを決めた矢先だった。 振り向く間もなく、足音はすぐに俺達の側まで辿り着いた。 懐かしさよりも戸惑い。 横たわる仁の前に屈み込み口開く。 「傷が深い」 首に巻かれた白いスカーフ。 薄い唇。睫毛が長いのが印象的だった。 「待ってて。今、手当てするから」 どうして杏奈がここに?
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