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次の瞬間、光刀の怒号が心の響き渡った。
『気をつけろ!刀に飲まれるぞ!』
黒と白の色が混じる刀の柄を握る手。
異変が起きたのは、その言葉の後。
まるで自分の手ではないような。
腕が勝手に動き始める。
強引に鞘から刀を引き抜き、同時に黒煙と白煙が噴射された。
何だよ。これ。
──ドクンッ
──ドクンッ
引き抜いた刀は腕が勝手に動き、切っ先が曹操に向けて真っ直ぐ構えられる。
不気味な声が再び聞こえてきたのは、俺が戦闘体勢に入ってからだった。
『違うな。アヒャヒャヒャ!これがお前の本能だ!たまらねえなあ!こんなにも自由に動けるのは!』
凄まじい勢いで噴射された煙は、一気に体と刀の周りに収束される。
『恨みか?復讐か?それとも憂さ晴らしか?何でもいいや!』
曹操が動き出す。何となくとしか言い様がないが、肌でひしひしと感じることができた。
「和也?」
「和也君?」
仁と杏奈の声が耳に入ってくる。
その音は透き通るように、通常とは違って鮮明にクリアに聞こえてきた。
「少し離れててくれ」
抑えきれない戦闘に対する意思。
その言葉を放つだけで精一杯だった。
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