局長と神

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残った片方の掌の先からは、セスの身長よりも長い白く輝いた弓が生み出される。 俺が知る限り、セスが有する能力の中で最も攻撃力に長けたもの。 通常は遠く離れた敵を撃ち抜くための遠距離攻撃として使うことが多いが、命力の量に比例して矢の威力が増幅するため、一番有効的な使い道は接近戦の時だって説明してたな。 まさに今がその時。 セスと敵の距離は1メートルもない。 この間合いなら確実に当たる。 おそらくセスの性格上、中途半端なことはしないはずだ。 案の定、作り出された矢の先には、セスの全ての命力が込められていた。 セスは左腕を伸ばし、凄まじいスピードで弓を構え、指先を器用に使って矢を合わせる。 どうやって引っ張るつもりだ? 右腕を失ったセスは矢を引っ張ることが出来ないはずだ。 「──!」 「親玉とった★」 セスは大きく口を開けると、矢の根元を歯で引っ張り敵に狙いを合わせた。 柳生に扮した敵はその場から動く気配はない。 敵はセスを見下ろしながら、ゆっくりと手のひらを突き出した。
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