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意識を失ったかと思えば、すぐに明るい光が霞む視界に侵入してくる。
「もう大丈夫ですわ。起きなさい」
重たい瞼を持ち上げると、すぐ横には卑弥呼さんが座っていた。
「卑弥呼さん?」
「あなたが意識を失ってから五分あまり。あなたを対象として強制クエストで飛ばされたのですわ。私がいるのは、あなたが初めに見たせいね」
そうだ。意識が途切れる間際に頭の中で、強制クエストのメッセージが流れたのはうっすらと覚えている。
それまでの出来事を思い出し、慌てて自分の腕に目をやる。
失ったはずの肘から先は綺麗に繋がれていた。
若干の違和感があり、指先が動かしにくい。
安心したのは、手に光刀が持たれていた。
『無茶をするからだ。まあ安心できる状況ではないがな』
光刀の声が聞こえてくると、安堵した気持ちになった。
「とりあえず腕は処置したけど、まだ足りないわ。今はここを抜け出すことに集中しないと」
そう言って、卑弥呼さんは上品にゆっくりと立ち上がった。
固い床が背中を痛める。
周りを見渡すと、蝋燭に灯された火で照らされる、薄暗くて狭い廊下だとわかった。
床から壁までレンガで形成され、先の方に扉がある。
扉は開いた状態で、奥の空間が僅かに見えた。
卑弥呼さんは俺の方を見ながら口を開く。
「強制クエストを作ったなんて話は聞いたことがないわ。不思議ね。あなたに関わりがあるのかしら」
扉の奥の開けた空間。
うっすらとしか見えないが、ここから直線に進んだ場所で、誰かが椅子か何かに腰かけている。
あれは……。
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