勝者と敗者-2

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『馬鹿な!奇襲ってどうするつもりなんだ!』 美沙がいる位置はほぼ間違いなく、孤立した浅葱色とは逆の、群がる人混みの中。 もう少し近づけば、どこにいるかわかるかもな。 高鳴る心臓。戦う前、正確には敵に襲いかかる独特の緊張感は、体の動きを固くさせる。 ライオンが獲物を狩る時は、毎回こんな緊張感を保っているのかもしれない。 俺はいつもシマウマだけど。 「杏奈!人が多い方の真上で降ろしてくれ!」 杏奈に呼び掛けながら人混みを指差す。 「人の真上は無理!平べったい地面じゃないと!」 そうだ。こんなにも緊張しているのは、うっすらと奇襲の作戦が頭の中で思い浮かんだからだ。 『何だ。何するつもりなんだ』 それなら。光刀。あれを使おう。 思い浮かんだのは、かぐや姫クエストでの記憶。 全員で崖から飛び立った時に使った形態へ。 『この高さからだと難しいぞ』 光刀はそう言いながらも、自身を巨大な傘へと変形させた。
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