勝者と敗者-2

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身を退くことができない敵。360度囲まれ隙がない中、さらに空からの攻撃。 攻撃が効くかは別にして、どう考えても孫権に逃げ場はない。 防御手段に用いようとしていた扇も、明らかに不発に終わった。 確信を得る。自分の行動に間違いはなかったのだと。 先の曹操との戦いで得られた胸に秘めたる闘争心と、はるかに対する想いは、自然と恐怖心を取り除いていた。 孫権は俺の攻撃に備え、自らの体の前方に、薄い膜のような命力を張った。 そんなことにも使えるのか。 おそらく自分が窮地に立たされた時、本能的に動いた結果がこれか。 振り下ろした光刀が、命力の膜に衝突する。 バッリリィイイイン! 硝子が割れるように膜は粉々に砕けちり、孫権の体がさらに近づいた。 同時に腕に衝撃が走る。 そのまま止まることなく、振り下ろした光刀は、容赦なく孫権を叩き斬った。 浅い。孫権は僅かに上体を反らし、光刀の軌道から逃れた。 腕に今までに感じたことが無いような、一瞬の閃光が走る。 大きな誤算。 光刀は宙に舞っていた。 握り締めた俺の両腕と一緒に。 見ると自分の肘から先が無くなっていた。
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