勝者と敗者-2

18/25
前へ
/25ページ
次へ
意識を失ったかと思えば、すぐに明るい光が霞む視界に侵入してくる。 「もう大丈夫ですわ。起きなさい」 重たい瞼を持ち上げると、すぐ横には卑弥呼さんが座っていた。 「卑弥呼さん?」 「あなたが意識を失ってから五分あまり。あなたを対象として強制クエストで飛ばされたのですわ。私がいるのは、あなたが初めに見たせいね」 そうだ。意識が途切れる間際に頭の中で、強制クエストのメッセージが流れたのはうっすらと覚えている。 それまでの出来事を思い出し、慌てて自分の腕に目をやる。 失ったはずの肘から先は綺麗に繋がれていた。 若干の違和感があり、指先が動かしにくい。 安心したのは、手に光刀が持たれていた。 『無茶をするからだ。まあ安心できる状況ではないがな』 光刀の声が聞こえてくると、安堵した気持ちになった。 「とりあえず腕は処置したけど、まだ足りないわ。今はここを抜け出すことに集中しないと」 そう言って、卑弥呼さんは上品にゆっくりと立ち上がった。 固い床が背中を痛める。 周りを見渡すと、蝋燭に灯された火で照らされる、薄暗くて狭い廊下だとわかった。 床から壁までレンガで形成され、先の方に扉がある。 扉は開いた状態で、奥の空間が僅かに見えた。 卑弥呼さんは俺の方を見ながら口を開く。 「強制クエストを作ったなんて話は聞いたことがないわ。不思議ね。あなたに関わりがあるのかしら」 扉の奥の開けた空間。 うっすらとしか見えないが、ここから直線に進んだ場所で、誰かが椅子か何かに腰かけている。 あれは……。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

894人が本棚に入れています
本棚に追加