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「行きましょう。あの人に会わなければ、クエストは終わらないわ」
卑弥呼さんに支えてもらい、ゆっくりと立ち上がる。
やはり傷の影響は大きく、治癒してもらったとは言え、体全体が重たく感じた。
薄暗い廊下を二人でゆっくりと進んでいく。
蝋燭を燃やす炎の音が、聞こえてきそうなほどの静寂。
足音が響き渡る。
その人物は、椅子に座ったまま動く気配はなかった。
段々と近づいていくことで、はっきりと見えるようになる椅子に腰かけた人物。
廊下の終着地。古くさい両開きの木製の扉の向こうに広がる部屋。
俺と卑弥呼さんはその扉の前で立ち止まった。
椅子に座る人物とは、向き合う形になっている。
純白のローブで身を包み、手首に巻かれた金色のブレスレットが煌びやかに輝いていた。
沈黙が続き、お互いが牽制し合うような空気。
先に声を出したのは向こうだった。
「入らないの?遠慮なく、どうぞ」
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