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やはり杏奈が敵のチームにいたとしても、失いたくはない。
杏奈の表情が曇ったのは、自分がチーム内の誰かを殺すしかないと決まったから。その気持ちは簡単に汲み取ることができた。
仁は続けざまに言葉を放った。
「杏奈はメビウスの輪の幹部なんだ。こんな場所に長くいるのはまずいはず。俺達も敵に見つかれば、敵の巣の中じゃ一網打尽だろう。やるなら早い方がいい。確認だけど、チーム内の誰かを殺せば敵のチームに移動するわけじゃなく対抗戦から除外されるんだよな?」
杏奈は仁の言葉に一度頷いてから返答する。
「うん。例えば何かしらの敵の能力で操られて殺しても駄目なの。自らの意思で仲間を殺した時だけ除外される。まだ一度目の対抗戦で、試運転みたいなものがあるから、その辺はわざと曖昧にしてあるんだって」
それなら試してみる価値だけはある。
「それでいいのか?杏奈」
ここへ来ての急展開。ほとんど一瞬で決まったことは、心の中で大きく揺らいでいるはず。
少なくとも杏奈は杏奈で、これまでメビウスの輪の中で積み重ねてきたものがあるはずだ。
でもチーム対抗戦からの除外方法を話始めたのは杏奈からだ。
もしかしたら杏奈は初めから決意していたのかもしれない。
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