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大聖堂から外へ出ると、異様な静けさに包まれていた。
聞こえてくるのは吹き荒れる風の音。
さっきまであんなに戦場の方は騒がしかったのに、何かあったのか?
まさか、決着がついたのか?
脳裏には、与作を彷彿させたあの男の姿が蘇る。
あれが神だとしたなら、今頃は最前線にいるはずだ。
仁は戦場の方角へ視線を向けた。
その方には、メビウスの輪のアジトが高く聳え立つ。大聖堂は裏手に隠れるような位置にあるため、ここからだと戦場を見ることはできない。
杏奈は何かを感じ取ったのか、緊張した顔つきで話した。
「この命力はおそらく神。誰かが戦っている」
杏奈は耳を澄ますように、手を当て喋り続ける。
「もう一人は神に匹敵するような人だわ」
あの雰囲気に匹敵する。
「局長だな」
確信めいた仁の言葉。
「わかるのか?」
仁は俺の質問に、戦場の方角から視線を外して答えた。
「最後の集まりの時に局長を見ることができたからな」
関心していると、杏奈は一歩前に出て俺達の方を振り返り、質問する。
「美沙ちゃんの正確な位置はどこにいるかわかる?」
「わからない」
俺の返答を聞いてから、何故か杏奈は手の平を空へ向けた。
「じゃあ屯所前まで行って、自力で探すしかないわね」
杏奈の手の平からは水が溢れ始める。
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