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『能力は水を使うのか』
光刀の言葉が心の中で響き渡るが、言い方としてはどこか警戒した口調だった。
大丈夫。杏奈だったら信用はできるから。
水神という名前の通り、能力は水を使うのか。
洪水のように激しく流れ始め、すぐに足元が水浸しとなった。
手の平から湧き出る水は、止まることなく流れ続ける。
「すぐに慣れるから」
地に隙間なく敷かれた絨毯のような一面の水。
『普通の水じゃない。命力で生み出された水だ』
足裏から伝わる振動。違和感。
徐々に足裏に強い水圧を感じ始める。
「仕組みはロケットと同じようなものだから。着地も任せて」
杏奈がそう言った、次の瞬間。視界が揺れたかと思えば、全身が揺さぶられるような感覚に陥った時、一気に景色が切り替わる。
高く聳えていたメビウスの輪のアジトが、下の方に見えた。
空を飛んでいる?
見渡すと地上が遠く見えた。
何かに吹き飛ばされたような感覚。
俺達はメビウスの輪のアジトを越えて、荒野の上を舞った。
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