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刀身と鞘からは白い煙が溢れ、全身を包み込む。
地上へ引き寄せられるように落下が始まった。
初めに見えたのは、一際目立つ浅葱色の羽織を着た群衆。
一つは孤立し、離れた場所で誰かと向き合っている。
群がる浅葱色は、何かを取り囲むように纏まって円を作り出していた。
肌を突き刺すような複数の命力。
いい加減わかったことだが、アラートが出るようなレベルの高さは全身に襲いかかるような精神的負担をかける。
あの中に美沙がいるはずだ。
『いいか。きついことを言うようだが、君の強さでは場違いなんだ。無理をするな。退く時は退き、美沙を連れ出したらその場からすぐに離れるぞ』
忘れられない、曹操との戦いの感覚。あの不思議な刀が俺に力を与えたことによって、何か言葉では表せないようなスリルが全身で感じ、鼓動を高鳴らせた。
いや……。
このまま奇襲する。
地上は段々と視界に迫りくる。
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