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「そうですね。まさか、最初に使うのが卑弥呼さんだなんて……。能力のアイデアと適性をしてくれたのも卑弥呼さんですからね。手の内はバレている」
仁の言葉の奥には、明らかに焦りが見え隠れしていた。
「そうね。ごめんなさい。今、戦争に異変を起こさせるわけにはいかないの……大きく私の中で状況が変わったのですわ」
状況が変わった。卑弥呼さんの言い方は、さっきから妙な突っかかりのようなものを感じる。
「和也。チーム名決めて」
画面を見る美沙の表情は、少し強張っていた。
緊迫して張り詰めた空気。
DIMを持つ手は震えている。
杏奈は迷いの表情を浮かべていた。
チーム登録を行う前に、仁に加勢すべきか迷っている。
卑弥呼さんから感じる雰囲気は、これまでとは異質の何か。
新撰組と言うよりは、別の何かで接してきているような違和感。
『あれだ……』
光刀が、何かに勘づいたような言い方で語りかけてきた。
『あの女の心は、今は新撰組ではない。私の予想では変わったとすれば、おそらく“あの時”』
その言葉に、脳裏に光刀の“あの時”が見えて、俺は大きな恐怖を覚えた。
まるで、ミステリーの殺人事件の犯人を知った時と同じような感覚。
意識を失っていたからわからなかったんだ。
あの時に発生した強制クエスト。
もしかして、卑弥呼さんは俺と同時に帰らなかったのか?
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