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『あなたは知るべきかなと思ったんだけど。あまり興味がないみたいね』
そう言うと、桜井は私を尻目に立ち上がった。
『何故、私に?』
手の中に納まった写真の中の女の子に、全くの興味がないと言えば嘘になる。
いや。正確にいえば、女に興味があるのではなく、何故このような形になったのかが気になった。
不審や疑問に思う点は、数え切れないほどある。
父は長年、世界が変わるきっかけとなるゲームの開発に携わっている。
母は交通事故で死んだと言った父の嘘。
私の他に、長男と次女がいること。
さらに、父は二度と私に会えないこと。
母は職場で父と知り合ったとしたなら、同じゲーム開発に携わっていた可能性が高い。
むしろ生きているなら、今も父と同じ職場で働いている可能性があるじゃないか。
『私はあなたのお父さんが何の目的で、世界を変わるきっかけを作り出しているのかが気になるだけだから』
帰り際、私が送り出すために玄関まで行った時、桜井の鞄の中で携帯電話が着信を知らせる。
『ちょっとごめんなさい』
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