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私の心が初めて動かされる。男の言葉によって。
得体の知れない事への危険以上に、桜井京香の居場所を知りたい気持ちが上回ったのだ。
私が一人の人間を探すためだけに探査能力を鍛え上げていたのは、三国志も知らない秘め事。
人の気持ちを理解することは難しいのに対し、遠くを見ることが出来る能力は非常に相性が良かった。
まるで、水晶玉を通してあらゆる場所を見ることが出来る、魔法使いの様な能力。
気づけば私の探査能力は、ブラックアウトのプレイヤーの中で随一と言ってもいいほどになっていた。
しかし、それでも桜井京香の居場所は掴めなかった。
私の見立てでは、ブラックアウトの中に必ずいると思っていたのだが……。
外の世界にいるのだろうか?
自分の力では探し出せないことに気付き、半ば諦めていたのだ。
悩んだあげく、私はその話に乗った。
それからしばらくして、男は約束通り、私に桜井京香の居場所を教えてくれた。
『桜井京香は少し特別でな。ブラックアウトの世界にはいない』
『じゃあどこに?』
『究極の地。未だかつてプレイヤーが辿り着いていない場所だ』
男はニヤリと意味深に笑ってから口を開いた。
『メインストーリーの終着点。龍の心臓部だ』
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