真夜中の宴

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粉々に打ち砕かれた兜。 それに留まらず、家康の首が吹き飛び血飛沫が舞う。 家康の首は重い音を奏でながら、ゴロゴロと床へ転がった。 残った胴体からは泉の様に血が溢れ、その場で立ち尽くす。 「いえやすああああああああああああああああああああああ!」 牛若丸の悲痛な声が響き渡る。 一瞬にして消え去った家康の命。 動揺した牛若丸が危険速度の動きを瞬時に止めて、敵に殺意を向ける。 子供は家康の命を奪っても、冷涼な雰囲気で平然としていた。 「よせ!牛若丸!」 怒りで溢れる牛若丸に対して、即座に子供は反応した。 牛若丸に向けて放たれる確かな殺意。 若いとはいえ、場慣れしたはずの牛若丸でさえ狂乱する出来事。 それほどまでに子供は冷たい殺気で、躊躇いのない残虐さを見せつけていた。 子供は拳を構える。 その拳は、牛若丸の命を奪おうとしている。 あの威力は止める術がない。 何としても局長室に、この子供を辿り着かせてはいけない。 危機的本能が働く。 俺が勝つ手段があるとすれば、牛若丸が殺られるその時。 攻撃を放った直後には、必ず隙が生まれる。
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