真夜中の宴

3/30
前へ
/30ページ
次へ
そう、仁が考えた作戦は成功したんだ。 一見、一か八かに見えたが、結果が出た後の仁は導き出した答えが当然かの様に納得しながら頷いていた。 その表情には、ホッとして安心が隠れていたことには間違いない。 ここにまだいれるのは、優君のおかげだ。 下手に隠さない方が良いだろうと仁が言い出し、素直に杏奈のことを土方さんと優君へ報告した。 「メビウスの輪のメンバー。しかも水神か……」 土方さんが鋭い目つきで杏奈を睨んでいたが、そこを優君が宥めてくれた。 「いいじゃないですか。土方さん。神はもう死んだのですから。今更、僕達に危害を加えてもメリットはありませんよ」 「こいつにとって、新撰組は仇敵だぞ」 「和也君達の友達だからこそ、メビウスの輪を裏切って一緒にいるわけですから。素直に言いにきてくれたってことは僕は大丈夫だと思いますよ」 確かに土方さんの立場からすれば、新撰組への仇討ちを心配するのは当然のことかもしれない。 「大事な物を失って芽生えた復讐の気持ちは、そう簡単に消えるものじゃない」 そう冷たく言い放つ土方さんだったが、何故か自分の瞳の奥を覗き込まれている様な気がした。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

943人が本棚に入れています
本棚に追加