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あの炎の明るさで近所騒ぎになっていない時点で、この放火魔が普通の犯人ではないということが分かる。報知器も反応してないしな。
そうなってくると、本間の夢の話しもあながち冗談ではなくなってくる。
「本間の夢か……。」
本間が見る夢には、いつも顔のわからない男が出てくる。
その男は本間いわく、悪人を狙い放火を行い、その悪人は本間に判断させていた。
「まるで正義の味方気取りだな。」
だが、今回は俺の家を狙ってきた。となると、悪人ばかりを狙っている訳ではなさそうだ。自分で言うのもなんだが、そこまで悪いことはしていないと、自負している。遅刻はするけど……。
まてよ?
確かアルファは、あの炎をマナでできていると言っていたはずだ。
そしてそのマナは悪魔の魔力の根源。アルファの嫌いな天使の源でもある。とアルファは言っていた。
「どうした?吏九。」
俺が考え事をしているせいか、谷口が怪訝な顔で近づいてきた。
「なんかあったか?」
「なあ谷口。……悪魔の敵はなんだ?」
「はあ?」
いきなりの質問に、オカルト野郎の癖に馬鹿を見る目で見てきやがる谷口。しかし、今の俺にはどうでもいい。「いいから答えろ」と促す。
「……まあ普通に考えりゃ、イギリス発祥の悪魔払い師『エクソシスト』とか、神様なんかだろ。」
「天使は?」
「まあ考え方によっちゃ、神様の使いである天使も敵だわな。……って急になんだ?お前からオカルト話とは珍しい。」
「…………なら、天使の敵はなんだ?」
「あん?まあさっきの話の流れじゃ、間違いなく悪魔だろうな。」
「……悪い谷口。早退するわ。」
「―――お前もやっと我が世界の良さにきがつい―――って早朝から早退発言!?一間目狩部だぞ!?」
谷口の切れのいいツッコミには悪いが、俺はもう教室を飛び出していた。
「俺は馬鹿か!」
走りながらも自問自答。
そうだ、狙われたのは俺んちでも、ましてや俺でもない。
自分が敵と思ってる相手が、自分が憎んでる相手が、自分にアクションを起こさないとなぜ分かる。相手への一方通行なわけがない。
「狙われたのはアルファだ!!」
俺は自分を忌ましめるように、走りながらも言葉を吐き捨てた。
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