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「む?高出力のマナの反応。……あっちか!」
アルファは消えかけた身体に鞭を打つように、放火の犯人を探していた。
契約者なしでのマナの使用は、思った以上にアルファを疲弊させていた。
幸い、この時間帯は人の気配はなく、犯人探しには問題ない。
(我の姿を見たらすぐ話しかけてくる奴がいるからな。)
今までの経験上、この姿で一人でいると、大抵交番とやらに連れていかれ、迷子扱いされた経験がある。
ふと、吏九の言葉を思い出した。
「チビではない!!」
思い出しつつ、一人でキレるアルファ。
そうほんとはチビではない。この姿はマナの消費を最大限抑えるため、できるかぎり小さくしているだけなのだ。
「まったく、それを吏九はわかっておらん!」
思い出し憤慨しつつも、住宅地を歩くアルファ。どうやらこの先からマナの反応を感じるようだ。
「あの家か。」
吏九の家と同じく、中流家庭の一軒家に強い反応があるようだ。
「しかしこの住宅地、変だな。」
いくら人が少ない時間と言っても、人っこ一人いないのはおかしい。
目標の家を見ると、どうやら女学生が学校へ行くところで、玄関を出ようとしていた。
「……勘違いか?」
しかしこの家の中に敵がいるなら、この女学生が何か知っているはずである。
「おい小娘!話がある!!」
「はい?」
女学生は前髪で顔を隠しながらも、こちらの声は聞こえているようだ。
「この家から出てきたなら、この家の事情をなにか――――」
「あなた迷子?お母さんは?」
「知っているの―――母上は知らん!我の話を聞け!!」
「なら、お父さんは?」
「父上ならダンテ地獄の最下層に―――ってこの下りはもういい!」
小さな子どもだと思われているのか、女学生は話を聞こうともしない。
「ごめんね、私学校だから交番には届けられないの。気を付けて帰ってね。」
そう言うと女学生は歩いて行く。
「待てっ!………ここまでして気がつかんと思ったか?」
ピタリと止まる女学生。
しかし、アルファは女学生ではなく、女学生の隣を睨んでいた。
「なあ、でてきたらどうだ、『グザファン』よ?」
女学生がピクリと動くのを、アルファは見逃さなかった。
「グザファン?それは私のことか?」
女学生に取り憑いているのだろう者は、女学生の口を使い言葉を発した。
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