頼みの綱

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1985年3月18日 13:02 トルコ.イスタンブール 森永堯氏は、日本本社からの要請を受けて、体当たりでトルコ政府へ連絡を取ることにした。 良い考えも浮かばず、かと言ってこのまま出ても来ない妙案のために無駄な時間を費やすわけにもいかない。 いまこうしている間にも、テヘランに取り残された日本人達は恐怖に怯え、頭を抱えながら救助を待っている。 「……当たって砕けろだ!」 彼は意を決し、そばにあった受話器を手に取る。 頼む相手は、無理筋の話でも即断即決で引き受けてくれるトップでなければならない。 しかも自分の親しい友人で、強い指導力と実行力のある人でなければならない。 となると頼む相手はたった一人しかいない。 「オザル首相しかいない……!」 ーー本来ならば、筋の立たないお願いだ。故に無手勝流となっても仕方がない。これ以上へたな思案をせずに率直にお願いしてみよう。 一度大きく深呼吸した森永氏は、当時のトルコ首相オザルのオフィスに電話をかけた。 頻繁に電話をかけあっている仲だったので、その時も「緊急」ということで、すんなりとつないでくれた。
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