頼みの綱

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森永氏がオザル首相と連絡を取っていたその頃。 日本大使館でも、とある出来事が起こっていた。 万事休すか、と頭を抱える駐イラン大使野村豊氏に、1人の人物が電話を掛けてきた。 「もしもし……」 『ドストゥム・ノムラ、そちらは大事はないですか?』 「ビルセルさん……ええ、今のところは」 『……ドストゥム・ノムラ、どうなさいましたか?』 野村氏の元気のない声が返ってきたことにそう問う人物は、野村氏と同じくテヘランに留まっている、トルコの駐イラン大使ビルセルだった。 二人は同じ日に駐イラン大使として赴任してきたこともあり、兄弟のようだと周りから言われるほど親交を深めた仲だった。 「ビルセルさん……実は……」 野村氏は、日本政府から、また日本民間航空会社から救援機が来る可能性は絶望的だということ。各国航空会社に何とか席の確保をお願いしたがどこも受け入れてくれないということをビルセル大使に話した。 ビルセル大使はそれを聞くと、こう言った。
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